学校法人 資産運用調査2020
カテゴリ:オルイン
種別:一部公開
国内学校法人を対象に、資産運用への取り組みについて調査を行いました。
資産規模の大きな大規模学校法人の回答が中心だったものの、回答が寄せられた学校法人の間では、6割りが分散を行えばリスク資産への投資も許容するとの見解が示されました。
概要
[実施主体]株式会社想研
[実施時期]2020 年 12 月~ 2021 年 1月
[調査対象]国内に拠点を構える私立学校法人
[調査方法]メールにて調査票を送付
[回収方法]メール
[回答数]16件
サマリー
- 学校法人の財務状況は現状はそれほどでもないが、将来的には厳しいと見ている割合が多い。
- その中で一部の学校法人ではブランド力の向上や留学生の受け入れなどの積極的な対応策を進めているケースもあった。そして、資産運用の役割はある程度認識されているようである。
- 実際、ほとんどの学校法人が資産運用を実施している。ただし、現金預金比率が 5 割程度という他機関の調査結果があるように、安全性重視になっている模様である。
- 一方で、安全資産重視で目標の運用収益を満たすとも考えていないため、度合いは別として、リスク資産への投資も行っている。
- また、リスク資産への投資の考え方は、低リスク、分散投資が主流で、外国債券や投資信託が注目されている。
- 資産運用において、外部のプロフェッショナルの知見の活用は 4 割程度で、担当者は 6 割が人事ローテーションの一環で携わっているとのことである。
- 運用利回りの実績に関する評価として「普通」が多いが、一貫した理由はなく、こうした体制面の関係で、担当者のレベル感の違いがあるのかもしれない。
- 学校法人の決算書等によると、資産運用は特定資産の範囲で行われることが可能になっている。つまり、学校法人本来の運営に関わる費用は確保された上で、資産運用ができるはずである。それにもかかわらず、現金預金等を中心にした安全資産への配分が多く、リスク資産にはなかなか投資対象に広がらない理由はとして次の2つが考えられる。
①学校法人の運用規定等によって、運用の自由度が抑制されているため
②資産運用の部門や担当者が、収入源の性質(授業料・税金・寄付金など)から自主的にリスクを抑えた行動をとっているため - 学校法人の運用規程が運用の自由度を抑制しているのであれば、効率的な資産運用を前提とした改定を検討する必要があろう。資産運用の部門や担当者が自主的にリスク回避的行動を取っているような場合は、資産運用に関する考え方を高めてもらうように、資産運用業界も加わって対応していくことが重要になろう。 当然ながら、経営を担う理事長、理事の理解を得ることも不可欠である。
- これらを解決することによって、学校法人の資金運用の効率性や運用効果がより発揮できる可能性が高いものと考える。
- 今回の調査回答者は、運用資産規模が比較的大きい学校法人が多かったため、分析結果や課題等にはその傾向が強く出た可能性もある。したがって、学校法人全体としては、本調査では捉えられなかった別の課題がある可能性も指摘しておきたい。